空冷Zと17インチホイールを最適な状態で組み合わせる為に専用設計で造られた1R9Sフレーム。
ダブルクレードル式ツインスパー形状の1R9Sフレームはスポーツバイクとしての動性能を徹底追求した姿で、フレーム単体剛性の向上はもちろん、最も大きな違いはステムヘッド&アームピボットの位置変更と、ステム&ピボットシャフトの軸径が大径化された点にある。ベストディメンションへの変更と軸剛性の飛躍的な向上が空冷Zを真に17インチ化融合させ、次なるステージへと導く。
40年以上も昔に造られたZ系ノーマルフレームと2016年に新造されたA16の1R9Sフレームは何がどう異なるのか、どれほどの進化を果たしたものなのか。前後17インチホイールに完全適合したジオメトリの1R9Sフレーム、その全ての対策と進化をノーマルフレームとの比較も踏まえて詳細にご紹介する。
ステムヘッドパイプ
1970年代に設計されたノーマルフレームのステアリングヘッドは現代のスポーツバイクフレームと比較した場合、非常に高く、またかなり前方にあってエンジンから遠く離れた位置にある。その為バイクを寝かし込むアプローチに大きく影響するロール軸が高く、軽快でシャープなコーナリングに向いたフレームではありません。またステムヘッドパイプの直径が小径で、上下ベアリングレース圧入部の肉厚も薄い事から、ヘッドパイプ部が変形しやすく、ベアリングレースの圧入が緩くなったり、酷いものはアンダーステムを取り外しただけで抜け落ちてしまうという現象にまで至る。
新規に削り出しされているA16のステムヘッドは従来のものより遥かに大径で、上下ベアリングレース圧入部も大型のレースに対応。肉厚も見直され、φ43のフロントフォークはおろか、より高剛性な倒立フロントフォークでも全く問題ない寸法になっている。激しいブレーキングを繰り返しても決して変形する事がなく、かつ現代の足回りにマッチングしたA16ならではのヘッドパイプである。
ステムシャフトとベアリング
ノーマルのステムシャフトは現代のものと比較した場合非常に細く、またそれによりステムベアリングも小型で荷重値の低い小さな規格です。φ36のフロントフォークと純正のステムであれば問題はないが、φ43の大径フォークに剛性の高いステアリングステムの組み合わせでは強度と剛性のバランスが悪く、ステムシャフトとベアリングには常に過大なストレスが掛かっている状態。
A16の現行SSマシンと同じ径までサイズアップしたステムシャフト。材質はA7075ジュラルミンの削り出しでハードアルマイト処理を施工した、軽量でかつ高強度なシャフト。ベアリングも併せて大型の規格品を採用。耐荷重値の大幅向上からアンギュラ(ボール)式のベアリングを採用できる事となり、ステアリングの回頭性は飛躍的に軽いフィーリングを実現。全ては大径化されたフレームヘッドパイプにより可能となった寸法であって、シャフト回りの軸剛性は現代の高剛性パーツに適合している。
スイングアームピボットの内幅
120程のリアタイヤ幅に合わせたチェーンラインは車体センターから前後スプロケットの取り付け面で85mm。リアタイヤを太くする事を前提にしていないフレームだから85mmのチェーンラインは別段不自然な設定ではない。それに合わせてフレームスイングアームピボット部の幅も234mmと狭く、17インチホイール化で主流となる180タイヤ幅に対応させるべくチェーンラインを108mmまでオフセットさせると、フレーム左内側にドライブチェーンが干渉してしまう。
A16はリアタイヤ幅180サイズを標準装備としており、チェーンラインは108mm設定でフレーム側スイングアームピボット部の幅を設定。現行車両と同等のワイドなスイングアームピボット幅となっている。
スイングアームピボットの位置
リアタイヤ直径が18インチである事を前提に設計されているのだから当然の事なのだが、ノーマルのピボット位置は高い位置にある。故に17インチ化した際、リアの車高を補正する為にスイングアーム垂れ角を強くしてタイヤ直径が小径化されたハイトの不足を補う必要性がある。リアアーム垂れ角が強くなると加速時に発生するアンチスクワット性が増大してリアサスペンションの動きをスポイルし、コーナー立ち上がり時の動姿勢に悪影響を及ぼす傾向がある。これは本来ベストな状態ではない。
A16のピボット位置はリアホイールの17インチ化に伴う車高ダウンからのアーム補正を必要としない構造で、スイングアームピボット位置はノーマルとの比較で10mm低い位置に設定されている。リアアーム垂れ角を強くする事なくリアの車高を稼げる条件となっている。17インチホイール化するならここまでやって初めてベストなジオメトリバランスである。